頚部リフトの手術

2つの手術法の組み合わせ

当院ではSMAS前方部(頬中央部)ではSMAS折りたたみ(SMASplication)を行い、SMAS後方部(耳前部)ではSMAS切除(SMASectomy)を行います。次にリテイニング・リガメント(retaining ligament=靭帯)を切離することにより皮弁の可動性がよくなり、後上方への引き上げ効果は大きくなります。しかし切開創での縫合のみで引き上げた皮膚を支えることには限界があります。切離した咬筋(そしゃく筋の一つ)のリガメント、頬骨(ほほぼね)のリガメントを皮弁引き上げ位置でSMAS側に固定することにより、創部緊張が緩和され、傷が早期から目立たず、効果の持続性も改善されます。
手術は多少複雑ですが、その安全性、効果を考えた場合には大変すぐれた術式となります。

ここではその手技の手順についてご説明いたします。

第一手順

1.皮切デザイン
側頭毛髪内ではVまたはW型皮弁とし、耳直上部に一つ三角弁を入れます。耳後部は後耳介溝に沿って上行し、余った皮膚に応じて先の三角弁につなげていくこともあります。

頬部フェイスリフトの切開ライン

首,シワ

2.剥離範囲 剥離範囲は患者さまのしわ、たるみの程度、希望する効果の程度に応じて決定しています。“Jowl変形”(四角くなっている顎のライン)改善のために皮下剥離の際にリテイニング・リガメントをすべて切離し、皮弁に可動性を持たせる必要があります。
とりわけ頬骨のリガメント、咬筋のリガメントを切離することは重要で、その位置をしっかり把握し、それより前方まで剥離します。

3.皮下の剥離
耳前部の切開を行い最初は3mm程度の層を頬部(ほほ)に向けて4cmほど皮下剥離します。次にフェイスシフト用剥離バサミを用いて、皮膚を薄く剥離します。頚部(首)リフトをする場合は、オトガイ下の剥離した部分と連続させます。耳後部の剥離は後頭部毛生え際までで、耳垂基部から頚部には6cm程度の範囲で剥離を行います。剥離の際リテイニング・リガメントを温存し、6-0ナイロン糸でマーキング後に切離します。

第二手順

4.SMASの剥離
SMAS切除の範囲として、鼻唇溝(法令線)に平行に外眼角(目尻)から耳垂基部を通り頚部に向かって紡錘形を描きます。紡錘形の耳介寄りのラインを耳下腺筋膜直上の深さまで切開します。

5.SMASの切除
剥離したSMAS外側縁の下顎角(下あご角)より下方の部分を垂直に引き上げ、オトガイ頚部角がいちばん鋭角になる点とSMASを切開した耳垂前方部の端と仮に縫合してみて、最大限の緊張でつり上げたときにどれだけSMASが余るかを予測します。余ったSMASを切除します。

6.SMASのつり上げ
切除したふち同士を縫合します。最初の1針は先に仮縫合した下顎角より1cm下あたりの正中側断端(正面顔即断面)を耳垂前方部に向かって垂直方向につり上げるようにして縫います。

7.SMASの縫合
それより頭側では余分なSMASを切除しながら、順次切り口同士を縫合していきます。

8.platysma(広頸筋)のつり上げ
頚部(首)リフトを効果的にするには頚部にSMASフラップを作製しておき、耳介後部筋膜につり上げ固定します。

第三手順

9.リテイニング・リガメント
皮下剥離の際に強固なリテイニング・リガメントにはすべて6-0ナイロン糸でマーキングを行っています。頬骨のリガメント、咬筋のリガメントを中心に片側5~8ヵ所でligament縫合固定を行います。

10.皮膚トリミング・縫合
当院では、はじめに下あごラインと耳垂基部との交点の部分で耳垂の形態に注意し、仮固定を行います。ほど良い張力(これは経験を要します)で、皮弁を後上方に引き上げた状態で皮弁に割を入れ、その後に割の先端で皮弁皮下、耳垂基部皮下、耳介軟骨の3点皮下縫合を行います。
次に耳珠(耳の穴の前方にある三角形の形をした小さな突起)上部、耳介上方の生え際ライン同士のポイントで仮縫合を追加し、その後に頭髪内、耳前部の皮膚をトリミングし2層に縫合します。つづいて耳後部ですが、こちらもほど良い張力で2層に縫合を行います。側頭部、耳介後面にペンローズドレーン(管)を挿入し、手術を終了します。術後はテープ、レストンスポンジ(医療用スポンジ)などを用い、軽い圧迫をして傷口を保護します

首,シワ

リテイニング・リガメント(Retaining ligament=靭帯)

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